ケース10 「払わぬ男 - 養育費を払わない元夫にきちんと払わせるには?」
「子はかすがい」という。
これは、子に対する愛情によって、夫婦の間が緊密になり、夫婦の縁がつなぎとめられるということを意味する諺である。
仲が悪くなった夫婦が、離婚を考えた際に「でもこの子の将来を思うと・・・」と離婚を思いとどまるような場合に使われる。
類義語で、縁の切れ目は子でつなぐ・子は縁つなぎという諺もあるようである。
この「かすがい」とは「鎹」という漢字を書き、材木と材木とをつなぎとめるために打ち込む、両端の曲がった大きな釘のことである。
なお「鎹」とは金偏に送ると書くが、子育てには金がかかるとか子供への仕送りは大変だという意味ではないことは当然である。
さて、講釈はこの程度にして、本題に。
A君とB子さんは年端もいかない子を持つ夫婦である。
二人は、事あるごとに意見が対立し、喧嘩が絶えない。
二人が話し合い「この子の将来を思うと・・・」と離婚を思いとどまれればよいのだが、そううまくいかないのも、また、夫婦の仲。
結局、二人は裁判所に離婚調停を申し立て、調停離婚することになった。
残念ながら「子は鎹」とはいかなかったようである。
二人は、親権者をB子さんとし、A君は、毎月養育費を仕送りすることになった。
最初のうちは、A君はきちんと養育費を払っていたが、彼女ができてお金が入り用となったため養育費の支払いを滞るようになり、最近は全く支払われない。
怒り心頭のB子さんは、裁判所に履行勧告や履行命令を申し立てたが、未払の養育費が支払われるのみであり、強制的に支払わせることもできないし、手続も面倒である。
B子さんは、A君が今後養育費を支払うか不安となり、何とか将来の養育費もきちんと支払わせたいと考えている。
しかし、そのような上手い方法はあるのだろうか。
ある。
B子さんは、調停調書にもとづき、裁判所に強制執行の申立をすればよいのである。
申立が認められると、債務者の資産から将来分の養育費も含めて、支払を受けることができる(民事執行法第151条の2)。
A君に資産がないような場合は、給料を差し押さえることが有効であり、一度差し押さえると、将来的に毎月給料から養育費を天引きして支払を受けることが可能となる。
筆者が行ったケースでは、勤務先が毎月天引きした養育費を母親に送金してくれたこともある。
なお、給料の差押えは通常4分の1しか差押えできないが、養育費の場合は例外として、給料の2分の1まで差押えが可能である。
ただ、給料差押えは、A君が会社を退職した場合には効力を失い、転職をした場合に再度強制執行の申立をしなければならない。
給与の差押えを受けたA君が会社に居づらくなり、退職を余儀なくされることも考えられるので、その点も配慮しながら給与差押えの可否を検討することが賢明である。
A君が子供の笑顔を思い出し、養育費の支払いをすることを願うのみである。
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