ケース3 「ズルい男 - ツケの代金、1年経つと請求できない!?」
年末年始を迎えると、世間は忘・新年会シーズンに突入し、繁華街を歩くとそこかしこに泥酔した大トラを頻繁に見かけるようになる。
『酒は飲んでも飲まれるな』というが、その頃合いが難しい・・・。
平手造酒君は、昨今流行りのIT企業社員であるが、彼は大の酒好きで、アルコールを口にしない日は年間僅か数日という豪の者である。
平手君は退社後真っ直ぐ自宅に帰宅したためしがなく、いつもお気に入りのクラブに直行するのである。
初めの頃は毎回支払をしていたが、クラブのママの信用を得てからは専ら「ツケ」に頼っている。
しかしその「ツケ」も何十万円と溜まると支払が容易ではない。
平手君は店に行くと支払いを請求されるので、自然と足が遠ざかり、通わなくなってから一年が経過した。
しかし、悪いことはできないものである。
某日、絶対に会うはずのない場所でたまたまママに遭遇してしまった。
ママが怒り心頭で「ツケ」の代金を請求したことは言うまでもない。
しかし、平手君はママの請求に対し臆することなく、
「自分は代金を支払う義務はない」
と平然と応えたのである。
はたして、平手君のそんな都合の良い言い分は認められるのか。
認められる。
民法上飲食費は一年間の短期消滅時効が認められており、平手君は消滅時効の援用をすれば支払義務を免れるのである(民法166条1項、174条4号、145条)。
しかし、クラブのママに打つ手がないわけではなく、裁判や調停を起こす等の時効中断(民法147条)措置を講じることにより、時効消滅を避けることができる。
但し単に支払い請求をしているだけでは時効は中断しないことにご注意を。
・・・誠に平手君にとって都合の艮い法律であるが、以後、店への出入りか禁じられたことは言うまでもない。

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