新型コロナウィルスの影響で
収入が減り借金の返済にお困りの方
新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言、その影響下での自粛・ステイホームは、被害を拡大させないためには必要な措置であったと言えますが、他方で、その経済的影響は計り知れないところです。
皆さんの中には、自営業、会社員、契約社員、アルバイト・パートなど、様々な形で収入を得て生活をされていることかと思いますが、いずれの立場でも、収入が減少したという方は少なくないかと思います。
この点、これまでの貯蓄から捻出された方、10万円の給付金、その他の助成金など、行政の援助制度によって乗り切れる方もおられるかと思いますが、他方で、これまでも日々の生活費の支出でギリギリであったり、既に借金、クレジットの支払いなどがあり、現在、その支払いができなくてお困りの方もおられるかと思います。
そのため、新型コロナウィルス感染症のために自己破産手続の選択を余儀なくされることもあります。
現にそのような相談者からの依頼が増えています。
自己破産手続自体は、破産法が認めた経済的にやり直すための1つの手段ですので、何も悪いことはありません。
ただ、できれば回避したいという思いもあります。
とりわけ、自己破産手続では、不動産などの資産の処分がなされることになりますので、自宅を所有し、住宅ローンを支払っている方にとっては、自己破産手続によって人生最大の買い物とも言うべきマイホームを失うことになるのは残念なことです。
自宅を維持しながら、なんとか債務を整理したいという場合の1つの手段が「個人再生手続」となります。
自己破産手続と違って、借金などの負債(住宅ローン以外)の全部の支払いが免除されるものではありません。
負債額などによって異なりますが、負債額が100万円以上で1500万円以下であれば、その5分の1について、3~5年かけて返済ができれば、その他の5分の4については免除されます(詳細は別表参照)。
最低弁済額の基準
- (1)100万円、又は、再生債権額の5分の1
再生債権額1500~3000万円は最大300万円
再生債権額3000~5000万円までは10分の1
- (2)清算価値(保有資産)
- (3)給与取得者再生では、可処分所得の2年分
今ある負債の全額を支払いをすることは困難であっても、5分の1であれば何とか支払えるというのであれば、自己破産手続以外の債務整理の選択肢がありうるのです。
そして、自己破産手続との最大の違いは、住宅ローンについては、そのまま支払いを継続し、自宅も維持することができます。
個人再生手続をとるためには、いくつかの条件(要件)があります。
自営であれ、給与取得であれ、まずは負債額の5分の1について、3~5年かけて返済することができるだけの継続的安定した収入があること(履行可能性)が必要となります。
仮に、今は、新型コロナウィルス感染症の影響により、収入が減少していたとしても、失業していたとしても、一定の収入にまで戻せる見込みがあるというのであれば、個人再生手続の可能性はあり得ます。
しかし、今、この時点を乗り切るためとして、金利の高い貸金業者から借入をしてしまうと、結果、雪だるま式に負債が増加し、自己破産手続とならざるを得ないことにもなります。
確かに、生活のために、新たな借入をしなければならないということもあるかとは思いますが、まずは、住宅ローンなどの負債について、一定期間、利息のみの返済などの条件変更ができないか、返済期間を見直すリスケジューリングができないかなど、現在の借入先に相談をしてみることが大事だと思います。
収入の減少は、将来への不安を招き、さらに、借金の存在は精神的な負担を生じさせ、仕事や家庭内に影響してくることもあります。
自己破産手続、個人再生手続、それぞれにメリット、デメリット、そして、法律上の要件が定められています。
|
破産 |
個人再生 |
任意整理 |
特定調停 |
根拠法 |
破産法 |
民事再生法第13章 |
なし |
民事調停法 |
取扱い |
地方裁判所 |
弁護士等 |
簡易裁判所 |
方針 |
清算型 |
債権型 |
対象者 |
支払不能
債務超過 |
支払不能の恐れ
債権額5000万円以下の個人で、継続的収入を得る見込み |
支払困難 |
支払困難 |
手続中の取立 |
弁護士の受任通知、又は、各種手続の申立により取立停止(貸金業法) |
個別訴訟・差押え |
手続の開始決定により個別訴訟・差押え停止 |
個別訴訟・差押え可能 |
個別訴訟・差押え可能(差押え停止決定の可能性) |
債務の弁済と債務の免除 |
財産を処分・配当
免責決定で債務の免除(免責不許可事由あり) |
一部弁済(3~5年の分割)・残債務免除 |
残元金を分割返済(利息制限法による充当計算で債務減額又は過払い金返還請求) |
残元金を分割返済(利息制限法による充当計算で債務減額) |
財産の維持・処分 |
生活維持財産を除き処分
担保権の実行可能 |
処分不要
担保権の実行可能(住宅ローンの特則あり) |
処分不要
担保権の実行可能 |
債権者の同意 |
同意不要 |
過半数の反対がないこと(給与取得者再生では不要) |
個別の同意必要 |
早めの相談をしていただければ、その選択肢を拡げられる可能性があります。
現時点でお困りの方はもちろんのこと、今後に備えての相談、助言にも対応していますので、1人で悩むことなく、是非、ご連絡ください。