夫婦関係を解消する際には、お金を巡るトラブルが絶えません。
お金にまつわる問題として注意しておくべきことは、主に次のものです。
財産分与とは
離婚をするときに、結婚生活で夫婦が築いてきた財産は、どのように分けられるのでしょうか。
相手の名義になっている財産については、一切自分の手元に置くことはできないのでしょうか。
婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産は、夫婦それぞれの貢献度に応じて公平に分配することになります。
このことを財産分与といいます。
財産分与の対象 ~どのような財産を分けるのか~
婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産が、財産分与の対象となります。
したがって、夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産は対象となりません。
また、婚姻後に得たものであっても、相続等によって得た財産など、協力によって得たという性質が認められないものは対象となりません。
一方、婚姻中に夫婦が協力して取得したものであれば、財産の名義は関係なく、財産分与の対象となります。
財産の種類については制限がありません。
土地、建物、自動車や家財道具などの動産、金銭、預貯金など、あらゆる財産が分与の対象となります。
なお、相手方の財産については、事前に、どのようなものがあるのか十分に調査しておく必要があります。
何の根拠もなく、「~の財産があるはずだ」などと主張したところで、相手方や裁判所を説得することはできないからです。
財産分与の割合 ~財産をどれだけもらえるのか~
財産を得るにあたって夫婦それぞれがどれだけ貢献したかに応じて、財産が公平に分配されることが目指されます。
この貢献度については、様々な要素が考慮されます。
外で稼いできた金銭だけが評価されるのではなく、家庭内での家事などのお金の発生しない働きも評価されます。
この貢献度についての評価は難しく、現在は夫婦5対5で認められることが多い傾向にあります。
財産分与の方法 ~実際に財産をどのように分けるのか~
■当事者の合意
簡単な方法としては、当事者の間で話し合い、合意をすることにより財産を分ける方法があります。
裁判所等の関与もいらず、夫婦間の合意だけで分与することができます。
また、合意さえできれば、上でみてきた財産分与の説明とは異なる財産の分け方をすることもできます。
ただ、当事者ご本人だけですと、意外な見落としなどをしてしまう可能性がありますので、弁護士に事前にご相談なされるか、弁護士を代理人として交渉を進めることをお勧めします。
具体的な財産の分け方は、財産分与の割合を参考に、
- 現物を分ける
- 一方が現物を取得する代わりに相手方に金銭を支払う
- 現物を売り払って得た金銭を分ける
などの方法が考えられます。
■裁判所の関与
当事者で合意できない場合には、裁判所の関与による離婚の調停、審判、訴訟の中で決めていくことになります。
期間制限
離婚した日の翌日から数えて2年を経過すると、財産分与を請求できなくなります。
離婚後は、相手の財産が減ってしまったり、相手と連絡がとれなくなることもあります。
離婚が成立する前に請求することをお勧めします。
慰謝料とは
配偶者の浮気や暴力などによって離婚に至った場合、精神的な苦痛を受けたことに対する損害賠償を相手に請求できる場合があります。
この損害賠償金が、慰謝料です。
どのような場合に慰謝料が認められるか
慰謝料が認められるためには、相手が違法な行為をしたといえることが必要です。
慰謝料が認められる例としては、相手方の浮気、不倫、暴力、生活費を渡さないなど配偶者としての義務を果たしていないこと、通常の性行為の拒否などがあります。
一方、認められない例としては、相手方に離婚の原因がない場合、お互いに離婚原因の責任がある場合、価値観の違いなど離婚の原因が違法とはいえない場合などがあります。
ただし、裁判所が慰謝料を認めるかどうか、すなわち相手の行為が違法かどうかを判断する際には、様々な事情が考慮されることになります。
したがって、上の例の場合でも、個別具体的な事情に応じて判断が分かれる場合もあり得ます。
慰謝料の額
慰謝料の額は、様々な事情を考慮し、個々の事案に応じて決められます。
具体的には、相手方の行為の違法の程度、精神的な苦痛の程度、相手方の支払い能力、請求する側の経済力、請求する側に責任はなかったか、などが考慮されます。
期間制限
慰謝料は、原則として、離婚した日の翌日から数えて3年を経過すると時効により請求できなくなります。ご注意ください。
「子どもにまつわる問題 養育費」をご参照ください。
婚姻費用とは
婚姻中に夫婦が生活を送る上で必要なお金のことを、婚姻費用といいます。
夫婦には、相手の生活を自分と同じレベルで維持し、扶養する法律上の義務があります。
この義務は、法律上の婚姻が続いている限り、たとえ離婚前に別居していたり、離婚の訴訟を提起していた場合であっても、負わなければなりません。
この義務に基づいて、離婚をするまでの間は、夫婦は婚姻費用をお互いに分担し合わなければなりません。
したがって、夫婦のうち収入が少ない側は、多い側に対して、婚姻費用の分担を請求できることになります。
なお、離婚の調停や訴訟の間であっても、婚姻費用の分担の調停は、並行して申し立てることになります。
婚姻費用の額
婚姻費用は、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して分担することになります。
実際の裁判所の運用では、標準的な生活状況を想定し作成された婚姻費用算定表を利用して金額が算出されるケースが多いです。
この算定表は東京家庭裁判所のホームページから見ることができます。
ただし、算定表は絶対的なものではなく、額が修正されることもありますのでご留意ください。
→養育費・婚姻費用算定表
年金分割とは
熟年離婚などの場合には、夫婦の年金をどのように分けるのかも問題となります。
離婚後に配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し、それをもう一方の配偶者が受け取るという制度を年金分割といいます。
夫婦の一方の給料から年金の保険料が支払われていたとしても、もう一方の配偶者の内助の功により仕事に専念できていたともいえることから、離婚後の年金の額も夫婦で公平に分配するためにできた制度です。
年金分割の対象
年金分割は、「厚生年金保険および共済年金の部分」に限り「婚姻期間中の保険料納付実績」を分割する制度です。
したがって、年金分割の対象となるのは、厚生年金と共済年金です。国民年金は対象となりません。
この点は誤解しやすいので、ご注意ください。
また、婚姻前に納付した部分についても対象となりません。
年金分割の手続
■夫婦間の合意
まず、社会保険事務所に対して年金分割のために必要な情報提供を請求します。
提供された情報をもとにして、年金分割の分割割合について離婚する夫婦間の話し合いがまとまった場合は、その内容を示す書面(公正証書など)を年金事務所の窓口に提出して、年金分割の請求をすることになります。
詳しい手続等は、日本年金機構のホームページをご参照ください。
→離婚時の年金分割
■裁判所を利用する手続
夫婦間の話し合いでは合意できなかった場合には、裁判所を利用することになります。
具体的には、離婚の手続でみてきた家庭裁判所における各手続(調停、審判、訴訟)を進めることになります。
この場合も財産分与と同様、夫婦5対5の割合で認められるケースが多い傾向にあります。
期間制限
年金分割は、離婚した日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
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