<治療開始>~いろいろな損害が発生~
被害者は、まず治療に専念することになります。
治療期間中には、主に次のようなが損害が発生します。
休業損害は給与所得者・自営業者・無職者・学生・専業主婦により算定の仕方が異なります。
<治療終了>~慰謝料の発生~
治療が終了したとき、「完治した場合」と「後遺症が残る場合」があります。
完治した場合には、入通院慰謝料が発生します。これは、通院期間と入院期間により、慰謝料が異なります。
後遺症が残った場合は、この入通院慰謝料とは別に後遺症慰謝料と将来発生する損害として後遺障害逸失利益が発生します。
後遺症慰謝料については、後遺症の等級に応じて一定の基準が定められています。
後遺症の等級については、第1級から第14級まであり、これ以上治療しても改善は見込めないという段階、これを症状固定といいますが、症状固定の段階で残存した後遺症に応じて等級が認定されます。
後遺障害診断書を医師に作成してもらい、これを損害保険料率算出機構が等級認定することになります。
ただし、認定結果に不満な場合は異議申立をすることができます。
後遺症逸失利益についても後遺症等級に応じて労働能力喪失率が異なります。
逸失利益は次の計算式により算定されます。
年収:
原則として事故前の現実収入額とし、給与所得者は給与収入が、事業者は事業収入が基本となります。
労働能力喪失率:
後遺障害の等級(1級から14級まであります。)に応じて、自賠責保険に喪失割合が定められています。
労働能力喪失期間に対応する係数:
人は67歳まで働けるということを前提にして、後遺障害の症状固定時から67歳までの期間に対応する係数(東京地裁ではライプニッツ係数によります。)が定められています。
なお、後遺症による逸失利益の算定には、多様な法的知識が必要となりますので、専門家に相談することをお勧めします。
さて、いよいよ相手の保険会社との示談交渉になります。
損害賠償算定の基準には、以下の三種類の異なる基準があります。
(1)自賠責基準
自動車運転者が加入することを義務づけられている自賠責保険に基づく基準であり、損害賠償額は最低限に抑えられていて、最も低い基準です。
(2)任意保険基準
任意保険基準は、各任意保険会社が独自に定めている基間で、損害額は自賠責基準と裁判基準の中間に位置します。
(3)裁判基準
裁判基準は、これまでの多数の裁判例の集積をもとに裁判所が拠って立つ基準であり、損害額はもっとも高いものとなります。
示談交渉の現実 ~保険会社の対応~
いうまでもないのですが、保険会社は保険金を支払う側です。
従って、保険会社の価値判断としては、被害者の救済や満足できる保険額の支払ということよりも、どれだけ支払金額を少なくするか、できるだけ自賠責の範囲内でという価値が優先することが多いと思われます。
保険会社が営利企業である以上当然のことなのかも知れませんが、時として、その示談交渉は被害者にとってとても不誠実と感じさせるものとなります。
保険会社が誠意ある対応をしてくれるのでとても助かると評価する相談者は非常に少なく、むしろ、残念なことですが保険会社の不誠実を訴える相談者が多いと思われます。
本人での交渉は難しい?
こうなると、被害者ご本人が保険会社と直接向き合い、示談交渉をするということは、非常な精神的苦痛を伴うものとなります。
ましてや相手は損害保険のプロです。保険に関して素人の被害者が太刀打ちできる相手ではありません。
保険会社の担当者の言うがままに損害額が低く抑えられてしまうことになります。
そこで、弁護士に依頼することが必要となります。
弁護士は、交通事故で発生した各損害項目に関し、裁判基準に基づき、もっとも依頼者に利益となる金額で交渉をします。
そして交渉が決裂した場合は、裁判で争うことになります。
そして、示談交渉が成立した場合も裁判を起こした場合もいずれにしても保険会社が当初提示してきた賠償額を大きく上回ることが数多くあります。
特に後遺障害が重い場合、保険会社の提示額の3倍~4倍になったという例もあります。
弁護士に依頼すると、損害額がこのように大きく増額することもありますので、是非、専門家たる弁護士に相談することをお勧めします。
いつ相談したらいいか ~早めの相談を~
なお、弁護士への相談は早ければ早いほど良いと思います。
その理由として
弁護士は医学の専門家ではありませんが、より高い後遺障害等級を得るためにいかなる検査が必要で、後遺障害診断書にどのような所見を書いてもらったら良いのかを理解しています。
また、認定された等級に納得がいかない場合は、等級を上げるために異議申立をすることも依頼できます。
仮に等級認定の際に弁護士に相談していなくても、示談交渉の際には相談するといいでしょう。
まずは弁護士に相談して、保険会社の提示額が適正妥当な金額なのかをみてもらうことをお奨めします。
<弁護士費用特約>~費用が沢山かかるのではと心配~
なお、弁護士に依頼する場合は費用がかかりますが、最近の保険契約には弁護士費用特約が付けられていることが多くなりました。
この特約がありますと、通常は300万円の限度額まで保険会社から弁護士費用が支払われますので、その範囲では弁護士費用の心配はありません。
従って、交通事故の被害者となった場合、ご自分の保険契約の内容をチェックすることをお奨めします。
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