1月31日に、文京シビックセンターに於いて、シンポジウム「『忖度』が奪う表現の自由」が日本ペンクラブ主催で開催されました。
司会進行を日本ペンクラブ会員で、月間「創」の編集長である篠田博之さんが務め、
壇上では上野千鶴子さん、香山リカさん、吉岡忍さん、当事務所久保田和志弁護士がパネラーで参加しました。
当事務所からも増田悠作弁護士、石川智士弁護士を始め、2名の事務局が参加しました。
会場は約200名ぐらいであったと思いますが、主に一般市民の方や埼玉から九条俳句訴訟市民応援団の方などの姿もありました。
パネルディスカッションとして、まず香山リカさんから、自身が講演する予定であった子供食堂についての
講演会が中止に追い込まれたことの報告がありました。
中止となった要因としては、一般市民から主催者である社会福祉協議会へ
数本のクレームの電話が入ったことであったとのことでした。
主催者の中止理由は、開催した場合の危険性などというほとんど理由になっていない理由で
あったということですが、抗議をよびかけたのが、某ヘイトスピーチなどを行っている団体の中心人物であった点、
その抗議に行政側が萎縮してしまったということでした。
上野さんの場合は、同様に講演中止に追い込まれた際に、すぐに対抗手段(行政訴訟等)を取って再演したということを紹介しており、
このような中止要請などの嫌がらせに対しては泣き寝入りすることなく法的手段など使って対抗していくことが重要であると報告されていました。
久保田弁護士からは、さいたま市での九条俳句訴訟の経緯が説明され、行政が中正公立の名目で市民の表現にたいして制限をかけている状況を述べていました。また、会場からは原告ご本人からの話しもあり、2審に向けてさらにこの問題に注目してもらいたいということでした。
吉岡忍さんや、篠田さんからも、現在のジャーナリズム、マスコミなどが、全体的に弱くなっているという指摘があり、言論の自由や平和など、ここぞという点についてはもっと頑張らないというようなことをおっしゃっていました。
表現の自由については、個人的には尊重するべきと言う言動をとりながらも、反面、ヘイトやポルノなど規制されたほうがよいという考えももっている、と香山さんが話していました。悩ましいところです。
ただ、現在の国内の状況を見ると、行政により個人の表現や言論、政治的な活動が制限されることはあってはならないという点は動かないことであると思いますし、このように集会などを中止したりすると、結果的には妨害した者に成功体験を与え、このような行政などの忖度により自分の意見と違うことを良しとしない相手の要求どおりになってしまうこととなります。
会場の参加者から、表現の自由を守りたいというシンボル(例えばピンクリボンのような)を作ってみてはという提案がありました。それも良いと思いました。
このような当事者や現場に携わっている方々の話はいずれも興味深いものでした。
私はすっかり九条俳句訴訟も全国レベルで拡がりつつあると思っていましたが、上野さんは知らなかったと言っていました。
このような訴訟の勝訴などの情報共有を、SNSなどの手段を使って拡散していったほうがいいという提案もあり、今後も是非多くの方にこの問題に関心をもってもらえたらと思います。
(事務局 塚越)