今日は亡くなった父の誕生日。
花でも買ってなんてのは洒落臭い,そもそも私のガラではありません。
なので,ちょいと出かけてきますか・・・
・・・今から7年ほど前,
とある知人の策略(?)によりゴルフを始める羽目になったのですが,強引な知人のおかげで,コンペデビューまでがクラブを購入してからたったの一週間しかありませんでした。
とにかく入門書を無我夢中で読みながらの一人練習を夜な夜な行いました。
案の定というか,デビュー戦の結果は,それはそれはひどい有様。
「こんなクソ面白くないスポーツなんざ,二度とやるもんか」と思う程の無様な結果でした。
そうは思いながらも,あまりに悔しくて悔しくて仕方がないので,その翌日から私は父に頼み指導を受けることにしました。
自分が歳を重ねるにつれて,なんとなく父との日々の会話が必要最低限なだけになっていたこともあり,少し気恥ずかしかった気がします。
もともと私の父はゴルフ好きで,息子がついにゴルフを始めたというのが相当うれしかったらしく,私以上に練習に熱が入っていました。
ですが,時に季節は11月。夜は冷え込むので,喘息を患っている父を連れて行くのはさすがに気が引けます。週末日中の暖かい時間に行こうとは言っていたのですが,帰宅すると,父はすでに防寒具に身を包み,本人よりも出発する気満々。
それからは仕事で遅くなる時以外は,ほぼ毎晩のように練習場に出かけたものでした。
父はいつも練習場に着くと,微糖の缶コーヒーを買ってきて「飲め」と台に。
「俺,無糖派で,本当は甘い缶コーヒーは苦手なんだよなぁ・・・」なんて思いながらも,口に出すのも悪いので「サンキュー」とだけつぶやく。
ドライバーがうまく振れず,悩んでいる私を尻目に,父はそのドライバーをぶん回しながら「なんで振れんのかねぇ」と余裕をかまし,キーーンといい音出をしながら飛ばしていましたっけ。
そういえば,父が会社員だった時のエピソードを初めて聞いたのは練習場への移動の車の中でした。
父が勤めていた会社では,その昔,ゴルフボールの開発もしていたらしく,工場内に試打スペースがあってほぼ毎日打っていたのだとか。それまで,自分が会社員だった頃の話など家ではほとんどしない父でしたので,その姿が少し新鮮に映りました。
二度目のコースに出る前の日には,ゴルフショップへカッパを買いに。
父と二人で買い物に出かけたのは,何十年かぶりではなかったでしょうか。
しかも,人が合羽のサイズを探してる間に,父はいつの間にかクラブ売り場へちゃっかり移動済み。展示されているクラブセットを見て,ニヤニヤしながら「春先になったらコースに連れってってやるよ」って偉そうに言ってましたっけ。
でも,車出すのは私なんですけどね(`Д´)
「絶対,上手くなって見返したるわ!!」なんて思っていたその年の12月下旬,私の勤務中に父は自宅で喘息の発作に襲われ緊急入院。
急いで病院に駆けつけましたが,父は一度も目を覚ますことなく,その日の深夜に息を引き取りました。
あの時,私がゴルフを始めるような事がなかったら,ほとんど会話もないまま最後の別れを迎えていたのかもしれないと思うと,2ヶ月という短い期間でしたが神様の粋な計らいだったのかもしれません・・・
・・・練習場に着き,ゴルフバッグを背負っていつもの2階席へ。
自販機の前に立ち,今日はいつもの「無糖」ではなく「微糖」のボタンを押す。
父がいつもふんぞり返って座っていた座席には,練習中にいつもかぶっていた帽子を置いて。
そして,あの時,ほとんどまともに当たらなかった&飛ばせなかったドライバーを持って,打席に入り,打つ。
キーーーン,キーーーン,キーーーン・・・
『ほれ,見てみ。当たってるどころか,ちゃんとまっすぐ飛んでんだろうが・・・』
・・・って,言ってやりたい奴はもういないんだよなぁ。
秋ってのは人をセンチな気分にさせるので嫌いです。
(鳥越)