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憲法「改正」を考える 自衛隊を明記する9条改憲案への疑問 その1

2018年03月27日 スタッフブログ, 弁護士 小内克浩, その他, 取り扱い事件

自民党憲法改正推進本部は、3月22日、執行部が有力と考える憲法改正条文案を発表しました。
その条文案によれば、現行の憲法9条1項・2項を維持したまま、新たに憲法9条の2を設け、
「自衛隊」を明記するとされています。

憲法9条の2の具体的な条文案は以下のとおりです。

第9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

 憲法は国の最高法規ですから、憲法改正は国民にとって日本社会の根本を変えるほどの大きな決断になります。
憲法改正に賛成の人も、反対の人も、無関心な人も、「あの時もっと慎重に考えておけばよかった」
と後悔しないように、憲法について真剣に議論するべき時にきているように思います。

 

法律実務家として憲法を扱う立場から、自衛隊を明記する9条改憲案に対して、疑問に思うことが3点ほどあります。

1 なぜ憲法に「自衛隊」を明記する必要があるのか。
2 自衛隊を明記しても「何も変わらない」という説明は本当か。
3 文書やデータを改ざんする政府に憲法改正を主張する資格があるのか。

 このブログでは、上記の疑問点について、3回シリーズで詳しく説明していきます。
なお、このブログは、憲法の議論を促すため、法律実務家の立場で憲法改正条文案に対する
疑問点を整理するものであり、その意味では完全に政治的に公正中立といえます。

疑問点1 なぜ憲法に「自衛隊」を明記する必要があるのか?

 最高法規である憲法は、国会の議決だけで改正することができず、必ず国民投票を実施する必要があります。衆議院法制局が2007年に行った試算によると、国民投票の実施には約850億円もの経費が必要になるとされています。これほど多額の税金を使う以上、憲法改正には十分な必要性が伴っていなければなりません。
 政府は、1954年に自衛隊が発足してから、「自衛隊は憲法9条に違反しない」と一貫して説明してきました。憲法改正が必要な理由について、「国際情勢を考えると必要最小限度の自衛力は必要だが、今の憲法では自衛隊を持つことができない。だから憲法を改正する必要がある。」と説明するのであれば、まだ理解することができなくはありません。ところが、政府・自民党の説明は、「今の憲法のままでも自衛隊を持つことは何ら問題がない。しかし、(850億円もの税金を使ってでも)、今の憲法を変える必要がある。」というものなのです。どうやら、一般人の常識では容易に理解することができない独特の論理が存在するようです。

 安倍首相は、3月25日の党大会で、憲法9条に「自衛隊」を明記する必要性について、以下のように述べています。

「いまだに多くの憲法学者は自衛隊が憲法違反だと言う。ほとんどの教科書にはその記述があり、自衛官の子供たちもこの教科書で学ばなければならない。このままでいいのか。」

安全保障は国民の意見が分かれやすいテーマです。政府の安全保障政策について、国民の間に賛成・反対の両方の意見があるのは、民主主義社会ではとても健全なことです。まして、憲法の役割は政府が暴走しないように縛りをかけておくことにありますから、憲法を専門的に研究している憲法学者が、政府が推進する政策の憲法上の問題点を批判的に論じるのは、ある意味当然です。

また、大人たちが議論している問題の多くは、「唯一の正解」が存在せず、複数の見解が成り立ち得る性質のものです。子どものうちから多様な意見や価値観に触れて、複数の見解が成り立ち得る問題を自分の頭で考えるトレーニングをしておくことは、むしろ教育上望ましいといえるでしょう。

 安倍首相の真意を忖度するに、仮にも一国の首相が、「憲法学者をはじめとして、政府の政策に批判的な人たちを黙らせるために、850億円もの税金を使って憲法改正をしよう」などという幼稚なことを考えるはずがありません。
党大会での上記発言は単なる説明不足か、もしかすると「偏向したマスコミ」が首相発言の一部を切り取って報道したために、誤解させるような印象を与えてしまったのかもしれません。

自衛隊は憲法に違反しないと説明してきたはずなのに、なぜ多額の税金を使ってまで憲法に「自衛隊」を明記する必要があるのか。この素朴な疑問に対して、これから首相がどのような説明をするのか注目しています。

(弁護士 小内克浩

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