6月13日に川越市で開催された「働き方改革関連法案」の地方公聴会を傍聴してきました。
「働き方改革関連法案」は収入の高い一定の労働者を残業代ゼロで働かせることのできる「高度プロフェッショナル制度」を創設する法案が含まれています。当事務所の弁護士が所属する日本労働弁護団では、長時間労働や過労死を促進する危険な制度であることから、高度プロフェッショナル制度の創設に強く反対しています。
地方公聴会では、各政党が推薦する有識者が法案についての意見を述べ、国会議員が有識者に対して質問をします。川越の地方公聴会では、日本労働弁護団前幹事長の髙木太郎弁護士をはじめとして、県内の労働組合の役員、企業経営者、産業医の方が意見を述べました。
高度プロフェッショナル制度では、過重労働を防ぐため、年104日の休日を就業規則等で定めるところにより与えなければならないとされています。
では、就業規則で年104日の休日を定めていたけれども、実際には年80日しか休めなかった場合はどうなるのでしょうか。高プロで働かされる労働者の健康を守るために年104日の休日を設けたのですから、実際に休めなかった場合には高プロの適用を無効にして、遡って残業代を請求できるようにするのが筋です。年104日の休日を確実に確保するためには、守らなかった場合に残業代を支払わせるという制裁を会社に与える必要があります。
しかし、政府提出の法案では、年104日の休日を実際に与えなかった場合の効果が明確に規定されていません。もちろん、そのようなケースが訴訟に持ち込まれた場合、裁判所が条文を合理的に解釈して残業代請求を認める可能性は十分あると思いますが、裁判で一定の判断がなされる前に、多くの労働者が年104日の休日を取れずに働かされ、過労死の被害が多発するおそれがあります。
地方公聴会で髙木弁護士は、このような法案の抜け穴を指摘して、高度プロフェッショナル制度に反対しました。
安倍政権は今国会で「働き方改革関連法案」を強行採決する構えです。日本労働弁護団は、労働組合、市民、政党と広く連携して、労働者の命や健康を脅かす悪法に断固反対していきます。
(弁護士 小内克浩)